移動中も学生達の視線が熱く、椿達は少し困っていた。中には「西沢さん!」と西沢さん経由で椿達のことを聞いてくるチャレンジャーも登場。

そんな中・・・


「西沢さん!」


Tシャツにジーンズ、その上からジャケットを羽織った、少し色黒な男が西沢さんを呼び止めた。


「深山(みやま)先生、どうしました?」
「いや~なんか呼び止めたくなっちゃって、お客さん?」
「はい。春河先生のご家族の方です。」

それを聞いた途端、深山は椿を見つめる。


「もしかして、椿ちゃん?」
「はい・・・。」

「そうだよね。やっぱりそうだよね!久しぶり!大きくなったね~!」

そういわれても椿の中で、この男、深山の記憶が無い。椿はどう対応しようか迷ってしまった。


「でも、どうしてここに?」
「西沢さんから連絡をいただいて、父の遺品を引き取りに。」
「そうなんだ。あっ、もう授業の時間だ。西沢さん、どの部屋行くの?」
「会議室です。」
「じゃ、俺も授業終わったら行くから!渡したい物あるから!」

「・・・わかりました。」

嵐のように話すだけ話して、深山は講義に行ってしまった。


「では、行きましょうか?」
「は、はい。」


椿達は、また歩き始めた。遺品の置いてある会議室に・・・。