神社に着くと、正嗣は何の迷いもなく森の中に足を踏み入れる。
うっそうとした森の中を懐中電灯の明かりだけで闇雲に進んでいく。やがて夜が開け、正嗣の視界の先の一部分だけが輝いていた。
正嗣は少し早足でその場所に向かうが、そこには誰もいなかった・・・。
「いい根性してんな、人間。」
正嗣が振り向いた先には、緑涼ではなく禮漸がいた。
木の上でキセルを銜えながら正嗣を睨み付けると、ぴょんと木から飛び降りる。
「緑涼さんは、“もう話すことはない”といっていたはずだ。それなのにここに来るって事は、“死んでもいい”ってことだよな?」
そういいながら、背中に下げた棍棒を取り出しながら、正嗣に向かって歩いてくる。
「俺は、みんなとご飯食べようと思っただけなのにな~♪」
正嗣は、何も動じることなく、バックの中のおにぎりとたくあんを取り出すと、禮漸に向けて見せ付けた。