そのままバスで空港まで行き、空路である街に出る。そこから電車を乗り継ぎ、とある村にたどり着いた。
古い駅舎の待合室で、一人の中年男性が座っている。


「あの・・・。」
「春河先生ですか!いや~お待ちしておりました!」


急に握手をされるは、マシンガントークだはで正嗣の少し困惑。その男性に案内されるように正嗣は車に乗り込み、旅館へと向かう。


車の中で、今回の取材協力についての打ち合わせを始める。


「いや、この村では古くから鬼に関する話があるんです。」
「話ですか?」

「はい。この村の奥にある森には鬼が住んでいて、村人と鬼との争いがあったそうです。この争いを止めるために、当時の村長と鬼との間である約束を交わしたんだと。」

「その約束って何ですか?」


「村の敷地を二つに分けて、森側を鬼の敷地、街側を人の敷地にすると約束したんです。しかし、人がその約束を破ってしまった。村の豪商が、森の木を使って一儲けをしようと考えて、森の木をいくつか切ってしまったんだそうです。」


「人の欲のせいで・・・」


「んだ。その結果、怒った鬼達と村人との間で戦が起こってしまったんですよ。鬼側にも人側にも多くの死者を出してしまって・・・。この村では、鬼の怒りを静めるために、その戦が起こった日には、必ず新しい木を植え、酒や米、農作物などを献上する祭事をするようになったんです。」


正嗣は、村人からその話を必死で録音しメモを取る。


「その森、立ち寄っていただくことっていうのは出来ますか?」

「ちょうど旅館への通り道なので、いいですよ。」