「どうだった?いた?」
正嗣が足元を見ると、猫の姿になった月見が、靴の上にちょこんと乗っかっていた。
「帰ったあとだった。でも、オーナーさんからいろいろ聞けたよ。ありがとう。」
正嗣は、月見を持ち上げると、月見の案内でさっきの工場街に戻ってきた。
「いたのか?」
凛香が帰ってきて早々聞いてくる。
「いたけど、帰った後だって。でも、これから椿の仕事ぶりをメールで送ってくれることになった。」
「連れて帰らないのかい?」
「よく慣用句かことわざであるじゃん。“かわいい子には旅をさせろ”って・・・長谷川さんだったら椿を預けても大丈夫だって思えた。」
正嗣が、ニコニコしながらそういった。凛香達は何も言葉を返さなかった。
「本当にいいのじゃな?」
「あぁ。みんな、ありがとう。」
「じゃ、帰ろう。みんな待ってると思うから。」
「そうだな。大人になったっすね。旦那。」
「もう年から考えてもおっさんだよ、輪入道。」
そんな話をしながら、正嗣達は家に向かって帰っていった。