数十分後
車は町外れの工場街に着地した。あたりは暗く、人気があまりない場所だった。
「こっち。」
正嗣は、月見に手を引っ張られながら街のほうへ進んでいく。
その後ろを凛香と人の姿になった輪入道が追いかけていく・・・。
工場街を一歩抜けると、大きな通りに出る。そこは華やかで多くの人が行き来していた。
「正嗣、あそこ!」
正嗣の目の前に小さなオープンカフェが目に入ってきた。しかし、閉店時間が過ぎてしまったらしく、店員が椅子やテーブルを店内に運んでいた。
「椿・・・」
大きな道路を挟んだ反対側で運んでいたその店員が椿だと気づくには時間はかからなかった。
しかし、正嗣はその場所を動こうとはしなかった・・・。