「…………ただいまー」
彼はいないはずなのに、電気がついた明るい家に入る。
男物の大きなあったから、彼が帰ってきていることは確実だろう。
「おかえり」
テーブルに並ぶのは、色とりどりの豪華な食事。
なぜか物凄い色をしたものもあったけど、そこは見ないふり。
キッチンに立っていた彼は、エプロンを外すと私の向かい側に座った。
「いただきます」
「…………い、いただきます」
いつもと何らかわりない様子の彼。
でも長いつきあいの私にはわかる。わかってしまう。
────どうしよう、結構怒ってる………!!
「ねぇ、凛」
「なに?」
食事が半分くらいになった頃、彼はふいに食事の手を止めて私をみた。
「わりと真面目な話があるんだけど、聞いてくれる?」
「う、ん」
さっき美咲に言われた言葉が頭のなかをぐるぐる回る。
私は無意識にぎゅっ、と箸を握りしめていた。
「…………まずは、異動の事、いえなくてごめん」
彼の顔が、見れない。