「三嶋部長と喧嘩したんだって?」



「…………遠慮がなくてうれしいよ」



夕飯には少し早い時間だったが、私達は久しぶりに居酒屋で一緒に飲んでいた。



本当は帰って色々と支度をしたかったのだが、彼のことは何と専務が引き留めて飲みにつれ回してくれるらしい。



彼も上司から飲みに誘われたらことわれないだろう。



なんせ何個も階級が上の役職の方なのだ。



私はそれを聞いた時、頬が引きつるのを感じた事を否定はしない。



吉城夏実(よしきなつみ)専務。



バリバリのキャリアウーマンで、女だてらにここまでのぼりつめた皆の信頼もあつい人だ。




しかし、誰も彼女と飲みにいこうとしない。



それは何故か?それはいたって単純で、彼女が物凄いザルだからだ。しかも自分も飲まされる。



一度それをしらない新人の時に大勢で飲みにいったが、気づいたらどこかのホテルに運ばれていた、なんて事もあった。




でもホテルに運んでくれるなんて、女の特権。
可哀想に、男どもはそのまま座敷に放置だったらしい。



その専務が彼を誘う、と。



帰ってこないのは好都合だが、なぜそのようなことになったのか、尋ねる勇気はない。



専務にも、同僚にも。