「あったかいね、手」
「‥ん」
彼の左手を握りながら、ゆっくり肩に寄りかかった。
寒い冬の日だった。
「‥落ち着く‥」
「‥ん」
ん、しか言わない。でも分かってる。
彼の手が、力を込めて、私の手を握っていたから。
そして少し震えていたから。
約40分前。私はレイプされた。
知らない男の人に。急に人気のない野原に連れ込まれて。
雪が降ってた。
抵抗できなくなった後、仰向けのままだったから、どんどん雪が私の顔に落ちてきた。
冷たかったし、痛かった。
でも、目の前がにじんでて、本当はあんまりよく覚えてない。
全身が寒かった。
寒くて寒くて。