あともう少し。
急がなきゃ。

ぐるぐると、先生の怒る顔が浮かんで、思わずぎゅっと目をつむる。

(また説教は勘弁…!!)


ーーそのとき、体いっぱいに衝撃が走った。






…ドンッ!





「ってぇ…」


綺麗な黒髪と着崩した制服が印象的な、男の人が肩を抑えて顔を歪める。

全然前を見てなかったせいで、人にぶつかってしまったのだ。
あたしは急いで頭を下げる。


「ご、ごめんなさい!急いでて前見てなくて…本当、ごめんなさいっ」


しんと、沈黙が流れる。
バクバクと胸の音がうるさい。