――― たまには女扱い、してみませんか?
中島夏海。
今朝は夢の中でうふふあははしていたら寝坊してしまった。
慌てて飛び起きて仕度をすませる。
朝食は食べずに家を飛び出た。
(朝ごはんベーグルだった…食べたかったな)
心の中で呟いた。
『ふぁあ〜…、眠すぎる』
無事学校に着き、でかいあくびをしながら顔に手をあてる。
すれば、
「うわっ、でけぇあくび!!俺食われそー…」
『なんだと、コラ。大体うちはあんたなんか食べません〜』
クラスメイトの塚崎優汰に会ってしまった。
優汰は、男子テニス部部長。
成績優秀スポーツ万能。
おまけに顔も性格も愛想もよくて。
当然女子が放っておくわけなかったのだ。
ガラッ、音をたてて扉を開けて教室に入る。
「夏海ー、おはよ!」
『おはよう、真愛』
おはよう、と来てくれたのは親友の真愛。
真愛は、可愛くて、くるみ色の髪をストレートに伸ばして、
少し大きな身長にスラッとした細い脚をしていて。
それでもって嫌味な子じゃない。
全てがあたしの憧れだった。
(こんな風に可愛かったら優汰も…)
『好きになってくれたかなぁ…』
心の中の呟きを口に出せば真愛が言った。
「優汰は夏海のこと好きだよ。きっと。」
『きっとが付くんかい。』
真愛にツッコミをいれてから、ちらり優汰を見れば、
「ねぇ、優汰ぁ!」
「塚崎、お菓子食べるー?」
女子に囲まれる優汰の姿があった。
はぁ、溜め息を呟いても朝の教室の音色に飲み込まれた。
**