玲ちゃんが演奏を始めた。



「玲ちゃん、やっぱりすごい…。私には、玲ちゃんみたいにうまくは弾けないよ…」



 私が言うと、玲ちゃんは私の頭をポン、と軽くたたいて。



「俺、香織みたいに演奏できないよ」



 けなされたみたいで、私は



「酷いよ、玲ちゃん。下手って遠回しに言ってる」



 玲ちゃんが目を見開いた。



「そんなんじゃないよ。香織の演奏は音が透き通っててさ、心が洗われるような気がするんだ。だから俺、香織の演奏が好きなんだ」