「トーマ」

「失せろ。いつ俺がキレんのか、俺にもわからねぇんだ」

「だとしても──」



その時、その男の、もっと奥の方から、また俺は呼ばれた。



「トーマさんっ!!」



その声は、そう、恐らく白蛇の中で俺が最も信頼し、きっと唯一このイラつきを止められるであろう……トモの、声だった。

あんなに奥から叫んで来るということは……誰かが呼び出したんだろう。



走って俺の所まで来たトモは、俺の前に来て……ヘラヘラと、得意の笑顔を見せてきた。

その顔を見て少し、冷静になる。



「何かあったんすか?トーマさん」

「……家出した」



その俺の答えに、全員が声を合わせて『は……!?』と驚きを示した。

俺自身は、『あれ、なんで俺、トモには話せるんだ?』と、驚いた。



「家出っすかー。青春の思い出っすね」

「そんな可愛いもんじゃねーよ」