☆  ☆  ☆



 彩はその場を動けなかった。
 いつの間にか灯台の明かりは消えて、辺りはすっかり明るくなっていた。
 穏やかな海の波の音だけが、繰り返し繰り返し聞こえている。
 灯台の壁にもたれかかるように座り込み、もう動く気力もない彩。
 後ろに、不意に人の気配がした。
 まさかと思って振り向いた。


「何してんだよ、彩」
「見事にボロボロだな」


 顔を上げるとそこには、悠と諒が立っていた。
 2人とも、穏やかな笑みを浮かべて。


「・・・!」


 彩は、立ち上がって二人に抱きつく。
 涙がたくさん、溢れてくる。
 照れたように、それでもしっかりと、悠と諒は彩を抱きしめた。
 夢じゃない。
 この匂い、感触。
 間違いなく、悠と諒だ。


「彩・・・」
「よかった・・・無事で・・・本当に・・・!」
「美樹ちゃんのおかげだよ」


 悠が言った。