放課後──志保は保健室で頭を抱えて唸っていた。

「だめだわ、なんの情報も得られてない」

 尋ねる教員は皆、匠について優秀な生徒としか説明しない。

「ここまで来ると逆に違和感なんだけど」

 誰もいない部屋でぶつぶつとつぶやいていると、入り口の引き戸が乱暴に開かれた。

「せんせ~バンコウソウちょうだい」

 城島 健が顔を出す。

 歩み寄る彼の手に擦り傷が見えて志保は小さな容器に水道水を注いだ。

「何したの」

「体育館で剣道の試合してたの」

「!」

 そういえば今日は地区大会の代表を決める他校試合してたわ……と、残って欲しいと以前から言われていた事を思い出す。