それでもナントカ乗り切り終盤に差し掛かった。



ほんのり暗くなり、イルミネーションがその存在を主張し始めた園内。

観覧車の前で万里が徐に俺に向き直った。


真剣な表情が、この茶番の終わりを確信させた。





「今日は俺の我儘に付き合ってくれてアリガトな、天音。」


「ああ…うん。」



頷きながら、…天音、そう呼ばれたコトに眉を顰めた。


今日は一日『君』とか言われて、名前を呼ばれてなかったからな。



怪訝な顔の俺に万里が少し切なそうに笑う。





「俺だってホントは分かってんだ。俺の好きなのはオマエじゃない。俺の好きなのは俺の理想ででっちあげた架空の女の子なんだって…俺の好きになった女の子はこの世の中、どこを探したって、



……いない。」




そう言われてちょっと胸が痛んだ。


意図的ではないとはいえ万里のトンデモナイ妄想を煽ったのは俺の女装なんだからな。







罪悪感を持て余す俺に、万里はにこっと笑った。






「だから、最後に【彼女】として聞いてくれないか。


俺、君がスキ。」