「せ~んりちゃん。」
くんっと髪の毛を一房、軽く引っ張られて天音に顔を向ける。
ドキッ。
悪戯っぽい目で私を捕えて、すっと顔を近づけてくる。
来るっ……来るし!!!
緊張の最高潮―――
唇が触れる寸前、私は堪え切れず顔を反らしてしまった。
その瞬間、ふっと天音の顔が悲しげに曇ったのが見えた。
ち…違うの、これは……。
逃げてしまった自分にショックで、そんな言い訳すらできなかった。
天音は何事もなかったみたいに、へらっといつもみたいな笑顔を浮かべて
「さ~。DVD観賞~♪」
ジョーダンっぽい口調でplayボタンを押した。
私は膝の上に置いた拳をぎゅっと握りしめた。