朝起きると、股間に違和感を感じたゼータは布団を剥ぐ。
「…………お前は猫か。」


そこには、自分の股にすっぽりはまって丸くなるコニーだった。
暖かい場所を求めてここに落ち着いたのだろう。すやすやと眠っている。

その頭をぐりぐりと撫でると、閉じて居た目がぱっちりと空いて目があった。
「にゃー」
おはよう、と言うように鳴くと、コニーはゼータにすりよる。
「コニー、朝はおはようだ、お、は、よ、う。」
「…ぁよー?」
「惜しい、おはよう」
「…………。」
うぅーん、暫く首をかしげて居たが、ああ、なるほど!と言うように口を開ける。

「ぶっころ!!!!」
「………………………」

ぶっ殺と言ったか、この天使。
コニーはやりきった!と言うようににこにこと笑っている。
なんなんだ…。
ゼータは爽やかな朝から頭を抱えたのだった…。



昨夜………


「それにしても、おいて行くのは良くないわね」
苛々とコーンスープをワイルドに鍋に突っ込みながら、由美香は瞳孔が開きっぱなしだ。
彼女も優しさにはかけるが、強いても日本人。放っておけない平和な国の出身なのだ。

「あいつなんかぶっ殺されればいいんだわ」
「ぶ……っこ、にゃー?」
聞いたことのない言語に片っ端からハテナを浮かべるコニーが、よりによってチョイスしたのは

「ぶっ殺す」

であった。
それを聞いた瞬間、由美香はにやりと笑ってある仕返しを思いつく。
輝く笑顔で教えたのだ。





「ぶっ殺」




を。




容易に思いつく犯人の高笑いが聞こえた気がして、ゼータは眉間にシワを寄せた。
困ったときにはとりあえずぶっ殺、なんて言うようになってしまったら困る。
これ以上由美香をこの世に生み出す訳にはいかないのである。
そう、紳士淑女、美しく整頓された世の中こそ美学。
あぐらを書いて座り、「山男のなんちゃら」とかいう辛い酒を飲み、アクセサリーをじゃらじゃらさせた女をこれ以上増やすわけには行かないのだ。

ここは教育的指導が必要なようだ。

ドンッ






「ドンっじゃねーよゼータのオッサン!!!うるっせーよ」
がちゃっと入ってきたオレンジの髪の、先日も現れたケイは顔を凍りつかせる。
「…………殺すの?」

入った現場は、おもっきり殺しの現場だった。
がっつりコニーにむかって銃はむいているし、がっつり怖がってる。
ああそうか、オッサンが幼女の世話なんかできるわけなかったんだ………


「失礼な事をいうな」
しつけだ、しつけ。

「しつけで銃はぶっぱなさねーわ」
呆れた。このオッサン前から変人だと思ってたけど、やっぱ変人だったわ。

「何をいう、悪い言葉を覚えたらいわないようしつける、保護者として当然だ」
「保護者はそんなに激しいしつけはしないと思うぜ」
ふるふると震えるコニーを抱き上げて、よーしよし、とケイは頭を撫でる。

「少なくとも、物凄いびびってる。」
可哀想に。

鉛玉をぶち込まれるかと思ったコニーは、自分を抱き上げるオレンジに何か言わなくてはと焦る。


ぶっころ、はだめ。
なんか黒いひとがおこっているからだ。じゃあ、いつもどおりなこうか?
だめだ、私の言葉はこの人たちには通じない。

ああ、そうだ…

お風呂に入ったとき、由美香に言われた言葉が思いつく。
そう、とっても嬉しかったときに覚えた言葉。

「………あ、あ、 あり、あとっ!」

ぱちくり。
びっくりしたようにケイは瞬きすると、零れそうな笑顔になる。

「なにおまえ、可愛いね」




取り残されたゼータは、
拗ねたように銃をベットにほおりなげるのだった………