碧はボロボロと泣き出すあたしをぎゅっと強く抱きしめてくれる。


「碧、あたし、何でいつも上手に出来ないのかなぁ……。美空を元気づけてあげたかっただけなのに……」


今ここに来たばかりの碧が、あたしと美空に何があったのか知らない。
でも、あたしは嗚咽を漏らしながら続ける。


ポンポンと背中をさすってくれる碧の手は、まるであたしを促しているかのようで、“話して”と言ってくれてるような気がしたから。


「あたしだってほんとはすごく怖いし、わざわざいじめられる為に学校に行くなんて嫌だよ。でも、美空がいるから、美空が一緒だからどんなにつらくても大丈夫って思える。でも、美空はそうじゃないんだ。あたしなんて美空の何の力にもなれないんだよ……!」


そこまで言ったところで、突然自分に回されている腕の力がなくなり、碧は体を離す。
そして、あたしの両肩に手を置いて、まっすぐな目で言った。



「それは違うよ、蒼唯」



碧の射抜くような目は、涙で歪んだ視界でもはっきりと見える。


「違うよ。大丈夫、蒼唯はちゃんと美空ちゃんの支えになれてるから」


いつもの優しい口調ではない。あたしに言って聞かせるような強くてまっすぐな碧の声。でも、温かみがあるのは変わらない。