クラブに着く頃には21時を回り既に卓は満席状態だった



客のほとんどは自分を指名で来てくれている



大好きで、ずっと続けたかったこの店


結婚さえしなければ、きっと続けていただろう



「辛い時は電話しろよ」



成瀬は他の客に気を使ってか1時間ほどで帰った




私は最後に一席一席、丁寧に挨拶に回った



一通り席を回り終えバックヤードで一息ついているとVIPの客に着いてくれと黒服が来た




「何か華が着くのは初めてなんだけど超VIPだから粗相の無いように」


「私なんかが着くより他の女の子着けた方がいいんじゃないの?」


「でも華、指名なんだよ」


「着くの初めてなのに指名?しかも最終日に?」



訳が分からず黒服に案内されるがままVIPに行くとそこには賢治が座っていた



何で…




驚いた次の瞬間


今朝、賢治に送ったメールを思い出した


そう言えば今夜、出勤するってメール送ったんだった


さすが、大企業の社長

私が働いてるクラブなんて何も言わなくてもすぐ分かっちゃうんだ…



賢治は可愛いホステスに囲まれ、相変わらず機嫌が悪そうだった



VIPは個室になっており他の客から見える事はない


私が中に入るのと入れ代わりで賢治の周りに座っていた女の子たちが席を立った