次の日、私は有休を貰い無心で黙々と荷造りをした


今出て行かないと別れる事に躊躇してしまう自分がいるような気がした



長くは無かった賢治との生活、荷物もそんなに無い



空っぽになった自室を振り返ると今までの事が夢だったような気がする




これくらい持っててもいいよね…



私はいつも胸元に着けていた賢治から貰った指輪をギュっと握り締めた





「スミマセン、これ3101号の五十嵐に渡しておいて貰えますか」



最後、マンションのエントランスでコンシェルジュに家の鍵が入った手紙を渡した





エントランスの扉を開くと雲一つ無い真っ青な空に太陽の光が眩しい



私は大きなタワーマンションを背に歩き出した



振り返らないよう…



泣かないよう…



思いとは裏腹に目頭は熱くなり涙が零れる



離れていく度に思い出すのは多くは無い賢治との楽しかった思い出ばかり




確かに私は幸せだった




被っていた帽子を深く被り直し涙が周りにバレないよう


ただ歩いた