「亜子。それは無理だよ。」
白崎は足を止めたあたしに気づき、自分も足を止めた。
「どうして?この人がいるから?」
「わからない?」
白崎は突き放すように冷たい目をしていて。
今の白崎にメガネはない。
「俺は亜子の家庭教師で、それ以外の何でもないよ。」
亜子ちゃんの腕がスルリと白崎の腕から離れた。
「亜子が子供だから?」
「いや、子供じゃなくても亜子は亜子だから。俺の気持ちは変わらないよ。」
ぎゅっと唇をんで亜子ちゃんは涙をこらえている。
「…亜子は玲二クンを振り向かせてみせるもん。」
その言葉は間違いなくあたしに向けられた。