ピンクのコートを元の場所に戻しながら、ボソリと呟かれたその言葉は、俺の心にチクッと刺さった。


「未那?」



「せっかくの初デートなのに、遅れちゃってごめんね・・・。だから許し」

「未那、何言ってんの?」



「え?」


「俺、別に怒ったりとかしてないけど。」



きっと、今の今まで、そのことで表情がパッとしてなかったんだろう。


徐々に未那の表情が、暗いものから明るいものへ変わっていく。



「本当に?だって、雅、ずっと怒ってるみたいだったし。ご飯のときも、様子がおかしかったら、怒ってるのかと・・・。」


「違うよ。」


「じゃぁ何で?」



「・・・いや、まさ、それは、いいから。」


「よくない!教えて!」



「またあとで言うから。」


「今言ってよ!」



どこまで子供なんだよ。


「あとで言うって、な?」



「今ぁ・・・うぅ・・・」


「あ、ま、待て!」



さすがに店の中で泣かれると、大参事だ。


急いで未那の手を引いて外に出た。



「未那、泣くな!」


「なんでぇ・・・っ嫌いになったぁ?」


「おいおい。」