「‥‥‥誰?」

 貴代は驚きのあまり声をあげそうになった。

 不倫相手の佳祐の後ろから部屋に入ってきた女性、

 見覚えのない綺麗な女性。
 
 現実なのかそれすら分からない状況にパニックを起こしそうだった。

 不可解なのは女性にまったく気付いていない佳祐の様子。

 自分の後ろにいる女性を気遣う素振りも見せず、

 いつものように貴代に擦り寄り、

「疲れた‥‥‥いつもみたいにマッサージして」

 甘えた顔をするとベットの上に飛び込んだ。

 貴代は、慌てて、

「潰されちゃう‥‥‥」

 大声で叫んだが、その場所には誰もいなかった。

 周りを見渡すと少し離れた場所から、佳祐を見つめている女性の姿。

「もうなんなんだよ。突然大声上げて

 貴代、今夜はおかしいぞ?」

 不機嫌な顔をした佳祐の顔が目の前にありびっくりして、

「おかしいのは佳祐でしょう。

 私の部屋に他の女、連れ込むなんて」

「馬鹿なこと言うなよ。
 
 何処にそんな女がいるんだよ」

 佳祐は、おちゃらけた態度で周りを見渡すがそんな女性の姿なんかないとばかりに、

「何処にもそんな奴いないだろ?

 大丈夫か?熱でもあるんじゃないか」

 逆に心配した顔をされてしまう。

「すぐそこにいるじゃない」

 テレビの隣に立ち佳祐を見つめる女性を指でさしたが、

 佳祐には見えていないのか?

 相手にしてもらえなかった。

 もういったいなんなのよ。

 佳祐がいつもの時間、家に帰るのを見送った貴代は、

 ソファに深く腰掛け溜息を吐いた。

 
 なんだかいつもと違って部屋の空気が落ち着かない。

 飼い猫のミーニャも白い毛を逆立て、

 部屋の隅からじっとこっちの様子を伺っている。

「おいでミーニャ」

 いつもみたいに手を伸ばしたが、

 一点を見つめ視線を外すことはないミーニャ。

 貴代もミーニヤの見つめる先を見つめた。

 嘘‥‥‥

 さっき佳祐が連れてきた女がまだそこにいる。

「さっさとどっかに消えてよ」

 大声で叫びクッションを投げつけたが。

 その女の体に当たることはなかった。

素通りしたクッション‥‥‥嘘

 呆然と見つめることしかできなかった。