プレイヤーの総プレイ時間は30時間程度かもしれない。
だが俺の世界は、回復の為に宿屋に泊まれば強制的に朝が来る。おかげで無駄に歳を食った。止むを得ないとは思うが。
眠くもないのに寝かせられ、俺のライフスタイルはガタガタだ。

 そんな旅も今、終焉を迎えたのだ。

レベル上げに力を注いでくれたお陰で俺の圧勝。最早、俺の敵ではなかった。瞬殺とはこれのことか。
ラストボスは威厳あるセリフの途中で俺の攻撃がヒットした為、「ぬははは!お前はここで死……」の「死」あたりで自身が逝った。
プレイヤーも人が悪い。最後くらいボタンを連打せずに、彼の言葉を聞いてやれば良いものを。世知辛い世の中だ。

 勇者という職は、聞こえは良いが、ラストボスを倒した後はフリーターだ。
職業の斡旋などない。ハローワークもない。
ストーリーによっては姫的な女子と結婚して王座に就く、という美味しいパターンもあるのだが。殆どは、仲間達を故郷に戻して、「勇者がどうなったかは…それは貴方の想像で彼は生き続けるのだ」などと抜かし、酷く中途半端である。

 そして何より。

続編が発売された時。人気2、3番手のサブキャラがやや成長して登場することはあっても主人公はなかなか採用されないのがオチである。この謎は未だに解明出来ない。
下手なことを抜かせば続編で敵キャラにされることもあるので迂闊な事は言えない。

 そんな俺は。

今、こうしてエンディングを迎えた。このプレイヤーと暫し離れるのは寂しさを感じるが、また誰か遊んでもらえる日を楽しみにしておくとしよう。