実際はほんの数秒かもしれない。

だが俺にはほんとに長い時間に思えた。

そらされた視線は隣へといく。

「幸…ちゃん…?」

女の目が大きく開かれた。

「やっぱり…!!恋華か!」

「幸ちゃん!!!」

幸が嬉しそうに駆け寄ると涙を溜めながらも
抱きつく女。

「幸ちゃん!幸ちゃん!」

「久しぶり。見間違えたよ。綺麗になったなぁ恋華…」

「幸ちゃんもすっごくかっこよくなったね!
ビックリしたよ~!」

弾んでく会話に俺も周りもただ茫然とする。

幸がこんな笑顔で話すのは珍しい。

この女…幸の女か…?

「幸さんに抱きついてるぞ」

「でも振り払ってないって事は
知り合いなんじゃね?」

「いや…もしかしたら彼女かも」

ざわめきはじめた周り。

それでも2人は気にせずに話が盛り上がっていく。

「恋華、成績トップだったのか?」

「うん。なんかなっちゃったの!
それより咲ちゃんは?」

「咲也は寝坊だよ」

「あはは~!変わらないね~!」

「まぁあとで会えると…ってすっかり
忘れてた。藍斗悪い」

「ほんとだよ」

存在忘れてたなんて。

悪い悪いと謝りながら手招きする幸。

来いってか。

無言で近づくとまた女と目が合う。

そういえばこの女咲也の事も知ってるんだな。