雨の降る街路地を歩きながら、俺はまたケータイを取り出す。



何回目かのコールの後で


「あれ?
思ったより早かったね。」


目当ての相手はすぐに電話に出てくれた。



「おう。
あのクソオンナ、逃げやがった。」


「…そっか。
じゃぁ、戻ってくる?」


「うん。
邪魔者はいなくなったから、オマエん家に戻るわ。」


その目当ての相手とは…川原綾音(カワハラ アヤネ)

今現在の俺のカノジョだ。




綾音とは友達が開いた合コンで知り合った。



サバサバしてて
男らしくて
美人なくせに、家庭的な綾音は
正直言ってかなり好みだ。


SEXの時、顔にかかる長い髪も好きだし、カラダの相性だって悪くない。


だけど……
俺と綾音は期間限定の恋人同士。



俺が好きだとアイツが告白してきた日、俺は綾音に正直にこう言った。


『俺には忘れられないヤツがいる』、と。


いつかソイツを奪いに行くつもりだから、綾音とは付き合えない。



俺はハッキリそう言った。



だけど……綾音は笑いながらこう言ったんだ。



『それならそれで構わない。
響弥くんに忘れられない人がいても、それはそれで構わない。それでもいいから……私ととりあえず付き合ってみようよ。』