だから……かな。


「なぁ、悪いコト言わねぇから綾音の家に戻れって。」


「ウルサイ!!
もう私のコトなんてほっといてよ!!」


「あーのーなーっ!いい加減素直になれよ!オマエの家まで送ってやっから、こっちに来い!!」


そう言って
私の右腕を強引に掴んで引き寄せたキョウちゃんを思いっきり睨みつけると、私は憎しみの全てを込めてこんな言葉を口にする。




「キョウちゃん、知ってた?
私ね。あの日から男の人が怖くて怖くてたまらないの。」



「……??」



「男の人と二人きりになるのが怖い。
いいなと思う人がいても、あの時を思い出して怖くなる。本当はこうやって触れられるのも、苦痛なの。」





そう言うと
キョウちゃんはひどく傷ついた目をして、そっと私から手を離す。



大きなライオンが
小さなネコのようになったのを確認すると



私はグッと拳を握りしめながら、思いの丈をぶちまける。



「あれから、私は男の人とお付き合いしたことなんてない。
パパの会社に就職したのも、男性恐怖症を抱えて普通のオフィスでなんか働けないと思ったからだよ。」


「…………。」

「キョウちゃんは私を非難するけど、自分はどうなの?!
私……私はキョウちゃんのせいで普通の人生を歩めない!!普通の女の子みたいに恋をして、キスして、抱きしめあうことが私には怖くて怖くてたまらない!
こんな私にしたのは、他の誰でもない。
キョウちゃんなんだよ??!!」