走って、走って
逃げるように走って


ヒールの高さも気に止めずに
ただがむしゃらに前を見て走っていると


「わっ……きゃあっ!!」


マンホールのくぼみにヒールがハマッてしまって、私は盛大にスッ転んでしまった。



「いったあ……」



膝小僧には大きな擦り傷ができて、ストッキングはビリビリに破れている。




しかも……


「ヒール……折れちゃった。」


少し高めのヒールが根元からポッキリと折れてしまった。






「ショック……
これ、結構気に入ってたのに……。」






なにやってるんだろう、私。
その場に座り込んで、途方にくれる。



ボロボロに泣いて
すっころんで
その場に座り込んでいる私を道行く人たちは、奇異の瞳で見つめている。



「ウッ…ふっ……ウゥッ…。」



後から後から流れる涙



苦しい

逃げ出したい

もう、やめたい、こんなこと



胸の中がいっぱいになって。
重くて、苦しくて、そこから逃げ出してしまいたくて。



心の中のストレスを全部吐き出すようにただひたすらに泣いていると空はいつの間にか黒い雲に覆われて。黒い雲からはポツポツと冷たい雨が降り出してきた。