玄関から聞こえる、二人の声
怒るキョウちゃんに
なだめる、彩音
――友達に……こんな想いさせちゃダメだよね……。
私はウッと決心をすると鞄を持って立ち上がって、二人の待つ玄関へと急いだ。
「響弥くん、急にどうしたの?」
「は?どうもしねぇよ。
アイツがムカつくから、帰るだけ。」
「……その言い分は響弥くんらしくないね。なんか他に理由があるの??」
「……ねえよ。
ただアイツがムカつくだけだ。
同じ空気の中にこれ以上いたくねぇ!」
リビングの扉を開けると、玄関先でキョウちゃんと綾音は言い争いを続けていた。
わかってはいたけれど、やっぱりショックだ。こんなにキョウちゃんに嫌われていたなんて……。
悲しくて立ちくらみのしそうになる体をふんばらせて
「ごめん!
仕事の呼び出しがかかっちゃったから、私、これで失礼するね。」
二人の間をかき分けて、私はパンプスに足を入れる。