あの場所にいたのは私だったはずなのに


キョウちゃんが見せる笑顔は私だけのものだったはずなのに





こんなこと考えてもしかたないのに

考えることすら罪なのに……

私は綾音が妬ましかった。






無防備に彼に触れて
話しかけられて
普通に笑いかけられる綾音が、ひどくひどく妬ましい。





あの日のサヨナラの言葉と共にすべてが水の泡と消えてしまった、私とキョウちゃんの関係。


あのサヨナラから形作られた、キョウちゃんと綾音の関係。



――なに…してんだろ、私。



ワイングラスを持ちながら
楽しそうに笑う二人を見て、無性に泣きたくなる。





この空間に異質な存在



いらない存在





そんな自分を再確認させられて
情けなくて、さみしくて
無性に泣きたくなってしまった。




グラスをテーブルにコトンと置いて、スカートをギュッと握りしめていると


「おい、クソオンナ。
オマエは親友の気遣いすら無にすんのか。」


「……え……??」


「サイッテーだな、オマエ。
何が気にいらねぇのかは知らねぇけどな!
そんな態度で正面に座られたら、こっちは気分悪くて仕方ねぇんだよ!!」



冷ややかで厳しい瞳をして
キョウちゃんは私を睨みつけた。