「おう、ご苦労。」
「……。」
何事もなかったかのように
コーヒーに口をつけるキョウちゃんに
手もちぶさになって
所在なく目をキョロキョロしてしまう、私。
――ど、どうしよう……
このまま座っていいのかな
でも、二人きりって気まずいし……
うう、パパと仁くん、早く帰ってきてくれないかな……!!
頭の中がパニックになりながら、ウワーっといろんなことを考えていると
「美織。」
「……え?……」
「座れば?
立ちっぱなしは疲れねぇ?」
コーヒーを飲みながら
キョウちゃんは正面にある、ソファーを指差す。
『美織』
キョウちゃんの口から飛び出した思いもかけない一言に、何故だか涙が溢れそうになる。
失っていた時間が戻ってきたようで
ずっと続いて欲しいと願っていたあの頃が戻ってきてくれたようで、私の目頭が熱くなる。
それと同時に憎くなる。
昨日、私にあんな悪態をついたキョウちゃんが憎らしくなる。
だから……かな??
「昨日は“アンタなんて知りません”って態度だったくせに。」
私は思わず
彼に本音をぶちまけてしまった。