「は、はいっ!!今すぐ!!」



パブロフの犬のように
条件反射で体がビクンと跳ねて、ピュウーと大急ぎで給湯室へ向かってしまう、私。




――うう……。




小さい頃から培われた奴隷根性はそう簡単には治らないらしい。




そんな私を見て
パパと仁くんは、ゲラゲラ笑いながら社長室の外へと出ていった。





給湯室でコーヒーを入れて、簡単なおやつを添えて、再び私は彼の待つ部屋へ急ぐ。





懐かしいような
怖いような
なにか落ち着かない感情を押さえながら私は扉の前でフーと深呼吸して


「失礼します。」


接客モードの笑顔を向けて、彼の待つ部屋へと入っていった。



漆黒の髪
漆黒の瞳
涼しい目元に
整った顔立ち



大きな肩幅に
Tシャツの上からでもわかる、綺麗にバランスよくついた筋肉


――当たり前だけどオトナになったんだなぁ。


そんなことを思いながら、私は彼の前に立ち


「お待たせしました。」


あくまでも冷静に
彼にコーヒーを差し出す。