二週間


カーターコーチの言い放った時間に、私は思わず絶句する。



絶句しているのは私だけじゃない。
当の本人のキョウちゃんまでもが、事の成り行きに絶句している。




そんな中
キョウちゃんにゆっくりと歩み寄って、彼の肩をポンと叩くと


「留学に必要なビザの申請、それにフロリダ大の入寮の申請は俺がしておいた。」


パパはニッコリと優しい笑顔で
キョウちゃんにこんな言葉を呟く。




「…え、えぇ!!?」


キョウちゃんが驚いて振り返ると


「この件はオマエの両親にも打診済みだ。
区役所には海外移転届も出してやったからな??
後はオマエの気持ちひとつ。
どうする?響弥。」


悪魔な笑顔を振りまきながら、パパはキョウちゃんに最終確認を取る。




――ど、どこまで用意周到なんだろう…!!




わが父ながら……
恐ろしいほどの根回しの良さには、恐怖にも似た驚きを感じずにはいられない。




ちょっぴり真っ青になりながら
血の気の弾いていく思いで、その成り行きを見守っていると



「…い…行く。」


「えぇ??」


「2週間後、成田に行ってやるっつってんだろーが!このバカ慎!!!」



うぎゃぁぁぁ~!と叫びながら、キョウちゃんはパパにこう答える。





「むかつく!!
こんなん半分脅迫じゃねぇか!!」


「何言ってるの。正当な取引でしょうが。」


「ふ、ふざけんな!!
外堀を完全に埋めてったくせに!!
こんなのNoって言うに言えねぇ状況じゃねぇか~~~っ!!」




そう言って
キョウちゃんはさめざめと泣き始める。