ココへ来た時とは打って変わった、その表情。まるで“キョウちゃんには興味がない”とでも言いたげなその表情に、私は言葉を失った。
コートを手に取り、出口に向かって歩き出すカーターコーチの背中をただ見つめることしかできなくて。身動き一つできずにギュッと手のひらを握りしめながら、ソファーにただ座り込んでいると
「…ちょっと待て、コラ。」
「What??」
「誰が行かねぇっつったよ。」
完全にプッツンがきてる表情で
顔に青筋を立てながら、キョウちゃんはゆっくりとカーターコーチに向かって歩き出す。
「俺は考える時間をくれって言っただけだぞ??」
「それはNoと同義語でしょう?
私は中途半端な選手に声をかける程ヒマじゃありません。やる気があるならまだしも、ない人に与える時間は時間の無駄遣い以上の何物でもありません。」
「…誰がやる気がねぇんだよ!!
俺はそこまで落ちちゃいねぇ!!バカにすんな、クソジジイ!!」
黒いオーラを纏いながらカーターコーチに食ってかかるキョウちゃん。
――だ、ダメだ!止めなきゃ!!
そう思って立ち上がろうとすると
パパが無言でスッと腕を伸ばして、私を通せんぼする。
――なんで!!?
意味が分からなくてパパの顔を振り返ると、パパはひどく冷静な顔をしたまま顔をフルフルと横に振る。
まるで……
邪魔をするんじゃない、とでも言うかのように。