キョウちゃんのその答えに少しだけホッとして胸をなでおろしていると、カーターコーチは目の前にある珈琲に口をつけて
「…キミはコワいだけでしょう??」
呆れたようにフフッとほほ笑む。
「…え…??」
「この2か月。きっと君はアスリートとしての練習は積んでいないね?泳いでいると言っても趣味の範囲内でしかないんでしょ??
選手として2か月のブランクは大敵だ。ブランクはアスリートからカンと闘争心を奪わせる。キミは…正直、再起できるかギリギリの所ですよ。」
その言葉を
キョウちゃんは俯いたまんま、黙ってそれを聞いている。
「キミが何もしていなかったこの2か月。君のライバルたちはさらに力をつけていますよ?それに若い世代も台頭してきてます。
計算された緻密で合理的なトレーニングを受けていない自分のカラダが徐々に徐々に腐ってきてる、それは君も少なからず自覚しているでしょう??」
「………。」
「我がフロリダ大学には前回世界水泳で準優勝したアメリカ代表のトーマス・シンプソンを初めとして、多数のメダリストが所属しています。むしろ世界大会の入賞者以外の方が少ないと言ってもイイ。その中で泳ぐのがキミはコワいだけなんでしょ??
弱虫ですね~。本当に弱虫です。
カッコ悪い。カッコ悪いですよ、Kyouya。」
そこまでカーターコーチが爽やかに嫌味を吐き続け、呆れたようにフフンと笑い、コーヒーをゴクンと喉のおくに流し込んだ後。
「…黙ってりゃー、好き勝手言いやがって……!!!」
「…What!?」
「この俺が弱いだと!?怖いだと!?
そんなコトあるわきゃねーだろーが!!このくそオヤジ!!!」
キョウちゃんは両手を握りしめたまま
ゴゴゴと黒いオーラを背中に発生させて、地よりも低い声を出し始める。