受け入れていた事実

昨日、キョウちゃんと幼なじみじゃなく“男と女”に変わった瞬間から受け入れようとしていたあの日の過ち。



だけど……
それを万人の目に晒されるのかと思うと、胸が苦しい。




わかっていたことなのに
今日、そうなることは事前にパパから言われていたことで、自分も受け入れていたことなのに。



いざそうなると、拒否してる自分がいる。





キョウちゃんがアスリートとしてこれからも活躍していくためには、打ち明けなければいけないこと。


あの行為は競泳に対する冒涜ではなく、脅されて、仕方なくやったのだ、って証明しなければならない。




それはわかってる
その理由は痛いほどわかってるけど…やっぱり怖い。




指先が冷たくなる
顏から血の気が引いていく


ガタガタと小さくカラダが揺れだすと


「大丈夫。
みんながついてるから、大丈夫。」


「仁…くん…。」


「大丈夫。
何が起こっても美織は俺たちが守ってやるから。」



私の両肩に後ろからポンと手を置いて
仁くんがニッコリほほ笑む。



――仁くん……。



そのあたたかな優しい笑顔に
凍りかけていた心がゆっくりと溶け始める。




「他人はしょせん他人だよ。
言いたい奴には言わせとけばいい。
だけど…俺たちはちゃんとわかってるから。」



「…え??」



「俺たち家族はもちろん、理子や綾音ちゃん、それに喜多川…。美織に近しい人はみんな美織の味方だよ?言いたい奴には言わせとけばいいんだ。
それにね??どんなことが起きたとしてもアイツは全力で美織を守ってくれるよ。」



そう言って
仁くんはキョウちゃんを指さす。