そうして、どれくらい見つめあっていただろう。



呆然とする俺に顔を寄せて
俺の唇に春風のようにさわやかなキスを落とすと



「バイバイ、響弥くん。
キミに恋して楽しかったよ。」


「あ…やね…。」


「ふふ。悔しいから頑張れなんて言ってあげない。プライドが許さないからフラれてもやらないからね?美織とのことは応援もしないし、お膳立てだって絶対しない。
だって、メチャクチャむかつくもん!!」



そう言って綾音はケラケラと笑う。






そして体をゆっくり離すと



「でも…ね?
キミを自由にしてあげるよ。」



少しさみしそうな顔をして
綾音は俺にそう言った。





「キミが好きだから
とっても大好きだから、別れてあげる。」





ごめん、
ごめん、綾音…!!





その笑顔にホッとなんてしない。
別れてくれてありがとうだなんて、どうやったって思えない。





俺なら、絶対無理だ。
愛してる女の幸せのために、自分の手を放すだなんて絶対に、死んでもできそうにない。




かわいくて、尊敬できる最高にイイオンナ、川原綾音




彼女に恋できれば、俺は絶対に幸せになれるのに、俺が求めずにいられないのは桐谷美織ただ一人。




なんで…
なんで俺は美織じゃなきゃダメなんだろう。



こんなにイイオンナを目の前にしても、俺は美織を求めずにはいられない。




そんな自分に……吐き気すら覚える。