”もう一度、片田に会いたい”



会いたい
会いたい
会いたい
会いたい
会いたい
・・・・・・



酔った頭はそれしか考えられなくなる


柚希は、何本目かわからないビールの缶を片手に、顔をテーブルの上に伏せる

ガラスの天板が火照った顔にひやりと冷たい


「・・・・めちゃくちゃ会いたい・・・・李生」


”李生”と呼んでみる


あの頃、そう呼ぶことがで出来なかった

李生が自分のことを

”伊藤くん”から”柚希くん”と呼んだあの日は

心臓が飛び出るぐらいドキっとして

とてつもなく嬉しかったのを覚えている


李生がまた少し近くなった気がしたからだ

どんどん近くなればいいと思っていた

そうして、いつか自分だけの隣にいてくれるようになればいいと・・・・


俺はただ単に恥ずかしくて、”片田”と呼ぶことを変えることが出来なかかった

”李生”と呼んでいいのかと迷ったが、タイミングがつかめなかった


そして、李生と呼ぶことがないままに、俺たちは離れていった


李生が俺の、


俺だけの隣にくることはなかった