柚希は口元を綻ばせながら、あの子は誰にプレゼントするのだろう

大方、彼女へのプレゼントかな・・・そんなことを思いながら、
男子校生が支払っていった千円札をレジにしまおうとして、ふと手が止まった




匠・・・・


柚希は思い出したのだ


匠がどんな思いで、自分のところにやってきて

そしてあの日、李生の誕生日だという日のために、ブルーローズの花束を渡したのか



あの花束を造るのに、匠は何度も店にやってきて

ブルーローズの花束に決めた



そして最後に一輪の白いバラを入れてくれと言った


なぜ、一輪だけなんだと言ったら、


”先生は特別だから”


と笑った


答えになっていないと言うと



”柚くんだって、誰かひとりだけの自分になりたいだろ”


と言った


”この一輪は、たったひとりの俺っていう意味”


なんだそれ、今のガキはませていて、よくわからないことを言うそう思った


だけど


それがどんなに匠にとって真剣で、大切な意味だったのか



今はよくわかる気がする



母親を適当に言いくるめて、この店まで彼女を連れてきて、誕生日にサプライズしたかった気持ちも



俺は匠の気持ち


”真剣”さ


その気持ちの大きさをわかっていなかった


いや


あの美しい彼女を目の前にしたら


わかっていたとしても


俺は忘れていたかもしれない




匠・・・・



ごめんな、、、、



柚希は札をレジにしまうと、またチャイムが鳴った入口に目を向けた