「うーん」

悟くんが腕組みしながら唸る。

「今日は後ろから押されたんだね? バスから転げ落ちた時は?」


「足元に何かあって、躓いたような感じがした」


「どんどんエスカレートしてるなぁ。しづ姫、どこかで桜を触った?」


「ううん」


「今年、桜を見たのはどこ?」


「えーと……学校と、小学校の近くの公園と、神社と……」


わたしの足元でペロが『ワン』と一吠えした。


「ああ、そうそう。ペロをもらいに行った時」


圭吾さんが、わたしの方に身を乗り出した。


「いつ?」


「圭吾さんとペロを見に行く前。ほら、圭吾さん、要さんとお話ししてたでしょ? あの時に見たわ。花は咲いてなかったけど、あれ桜でしょ?」


「近くには行ってなかったよね?」


わたしは頷いた。