「ほっといてくれ」

圭吾さんがぶっきらぼうに言う。


怖いもの見たさで盗み見ると、圭吾さんはスッと目を伏せてしまった。


どこが怖いんだか、よく分かんない。


「で、桜の匂いって?」

悟くんが聞いた。


「あ、うん。少し前から、身の回りで桜の匂いがするの。桜餅とか桜湯の、あんな匂い」


わたしはそれから、今日の事故の話と、怪我をする度に桜の香りを漂わせた人が現れる話をした。

年齢はまちまち。

でも、みんなわたしの怪我した場所を触りたがる。


「病院で見た子は、わたしに触った後、もっと幼い子供に変わったの。それで、人間じゃないんだって分かったんだけど」


「どうしてすぐに言わないんだ」

圭吾さんがボソッと呟くように言った。


わたしは俯いた。


だって―――


「家では匂いしないし、美幸に見てもらった時は何でもなかったし……ごめんなさい」


「謝らなくていい」