湯月はそれから名前を呼ばれる度に、壊れたオモチャのように涙を流すようになってしまった。


だから僕は”湯月”と呼ぶのをやめた。



僕らはもう、この世に
肉親のいない二人になってしまった。


二人はひとりぼっちだ。


でも二人は一緒だ。


僕は湯月で、湯月は僕だ。


もう湯月と僕の名前を呼ぶ
肉親はこの世に存在しないから…


『……真白……』


一度だけ、ボソリと
聞こえないくらいで言った。





そしたら湯月は
僕をまっすぐ見た。






それはまるで自分の名前を呼ばれたかのように

ただ僕をじっとみて、

何かを待ってるように思えた。




…喉はなぜかカラカラだった。




『……湯月、
今日から湯月を”真白”と呼ぶよ。』


湯月の澄んだ瞳が僕を捉える。


湯月は今まで見たこともないくらい
安心に満ちた幸せそうな笑顔で笑った。



そして湯月は僕を”湯月”と呼ぶようになった。



僕らはもう離れることはないだろう。



湯月は僕で、僕は湯月…



世界でたった二人ぼっちの世界で

生きていくんだ。