湯月は宙吊りの母親を見ながら
ただ立ち尽くしていた。


僕が何もしなければ
そのまま何時間でもそうしていたかもしれない。


湯月の肩に手をおくと、
一瞬小さく肩が震えた。


湯月は僕を振り返り、
何故だかニコリと笑った。


『…湯月…?』


名前を呼んだ瞬間に、
湯月の瞳の色が失われていくような
そんな感じがした。


もう一度呼ぶと、
湯月のその大きな瞳から
大粒の涙がながれてきた。


…このままでは湯月も…?


そう思った瞬間に、
僕は何度も湯月の名を呼んでいた。


湯月は耳を塞いで崩れるように
気を失ってしまった。