僕らが16歳になったと同時に
父は姿を消した。

ある日、突然だった。

父は変わらず無口で笑うことはなく、親子の間にはこれといって会話が成されたことがなかった。

父はどこかいつも遠くを見ているようで、
でもたまに義母と話すときは口角を微かにあげるくらいの笑顔は見せていた。


そんな父が16歳の誕生日に
久々に声をかけてきた。


『お前は再婚に反対だったか?』


あまりに予想もしていなかった質問だった。


そんなこと考えたこともない。


湯月にも出会えた。


『…反対だと思ったことはないよ。』


どう答えていいかもわからず
思ったままに口にした。


『…そうか』と呟くように言った父に目を向けると、力が抜けたように目尻を下げて笑っている父の顔があった。


初めて見るような父の笑顔だった。


その次の日だった…
父は出掛けたまま帰ってくることはなかった。



義母は訳もわからず狼狽えるばかりで、
毎日『大丈夫、帰ってくる』と唱えるように言っていた。


捜索願いを出そうと言ったのは僕だった。