「別に良かねぇよ。…県内の第一志望の体育大は落ちてるし、」


相良があたしの頭に手を乗っけた。
それでも、あたしは羨ましい。なりたいものがある彼が走り続けれる彼が、すごいと思う。


「…それでも、いいなぁって思う。真っ直ぐ自分の描いた未来のために走れる相良はカッコいいと思うよ」

君の後ろにのびる長い影、あたしはこの三年間その影に追いつくために走った。遠くて、追い付いても消えてしまいそうな影。

踏みつけて、留めておきたかった。

なんて、言ったら引かれるなぁと思いつつ、あたしは頭に乗っかったままの相良の手をどけた。

「何もなくても、頑張ってた長峰だってすげぇよ」


何もなくても、って。


「イヤミーっ!!」

「ちげぇって、単純に誉めてるだろ」

「なんか、ビミョー。これだから脳みそ筋肉はー」


トントン拍子で話が進んでいく、心地よい距離感。