「藤堂…くん?」


涙で真っ赤になった瞳に、焦りの色が見える。


「大変なんだっ‼ちょっと来て!!」


「えっ⁉」


なにっ⁉


わけがわからないまま手を引かれる。


「藤堂くんっ!」


ユキを後ろ目に、あたしは部屋から連れ出された。


藤堂くんに連れてこられたのはすぐそこの待合室。


騒々しい雰囲気で人が集まっている。


「これは……」


その人だかりの中心はテレビのスクリーン。


中継という赤いテロップ。


画面の向こうには……


「……っ」


息を飲んだ。


見覚えのある黒髪の青年。


「隼人…」


さっきまでの屋上。


強い風に吹かれながら、睨み合う二人の男の姿だった。


緊迫した状況。


その空気は画面越しにすら伝わってくる。