「…ど…く?」


「うん」とマスターが頷いた。


「ナイフに塗られていたんだって…。本当は2、3時間もすれば毒が回って、動くこともできないくらいだったんだって」


2、3時間……


実際はそれの倍以上の時間が経っている。


ずっと…、動けないような痛みと戦いながら、


それでも守ってくれてたの…?


「ユキ……っ」


「ユキ自身も、毒には気づいてなかったかもしれない。…でも、…苦しかったと思うよ」


マスターも、藤堂君も、服部さんも…


みんな、泣いていた。


毒が回る前に、病院に行けてたら…。


それでも、苦しくても、あたしのところへ来てくれた。


それなのに…


目の前で苦しむユキに、何一つしてあげられない。


「ごめん…っ……ユキ……っ」