きっと言ったら辞めさせられる。


あの仕事は俺が加奈子を助けられる、たった一つの望みなんだよ。


だから…


「喧嘩だよ」


俺はわざと笑って見せた。


「気に食わない奴がいてさ」


「雪夜……」


その時の先生の表情は心に深く傷をつけて、一生俺は忘れることができないんだろう。


そのまま俺は、施設を出た。


────・・・

SIDE莉子


「あのまま施設にいてもいずれバレるだろうし、何より俺のことちゃんと育ててくれた先生に申し訳なくてさ」


ユキ君は寂しそうに笑った。


壮絶な過去。


それは…あたしの想像に及ぶものなんかではなかった。


「まあ、そうやって施設を出て、俺がここまで生きてこれたのはマスターのおかげだよ」