言葉もなく…


ただ加奈子の小さな手を握りしめていた。


終わらない苦しみ。


やっと幸せになれたと思ったのに…


神様は俺から、たった一人の妹まで奪おうとするのか?


絶望で心は折れてしまったも同然だ。


こんな世界…


「くそっ…」


唇を強く噛んだら鉄の味がした。


世界からもう、光は消えてしまった。


「お兄ちゃん…」


顔を上げると、加奈子は柔らかい笑顔で俺を見ていた。


俺の目と同じ色。


赤い瞳。


色を失った俺の目は、加奈子の色を映してやっと輝いた。


どうしてお前はそんな笑顔ができる?