それは俺が中学校2年生だったある日のことだった。
育ってきた環境のせいか、人一倍甘えん坊だった加奈子は、俺が卒業してからも迎えをねだってきていた。
めんどくさいなと思いつつも、親の愛を知らない加奈子をかわいそうに思う部分もあって、俺は学校に毎日迎えに行っていた。
今日もいつもみたいに玄関にたどり着くと
「お兄ちゃんっ」
加奈子は満面の笑みで駆け寄ってきた。
そして俺の腕にぎゅっとしがみつく。
「おい、学校であんまりひっつくんじゃねえよ」
「だって寂しかったんだもん」
人目もはばからずにべたべたしてくる加奈子に、思春期の俺は恥ずかしさも感じていたけど…。
「お前、なんか熱くない?」
俺に触れる手が熱い。
見下ろした先の、幼い顔立ちの彼女の顔は真っ赤で。
「そんなことないよ…」
「いや、熱あるだろ」
たまらずおでこをくっつけると、すごく温度差を感じた。
よく見たら足取りもふらふらしていて…。
「大丈夫だから」
「大丈夫じゃない。いいからとにかく帰るぞ」
急いで加奈子を背負うと家まで走った。